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曖昧(あいまい)すぎる「日本語」

曖昧すぎる日本語

日本語は本当に奥深く、曖昧さを有し、それでいて繊細で美しい。

私たちは日本語学習者からの素朴な疑問から、そのことを再発見できるように思います。

日頃、日本語学習者からの視点のおもしろさと、分からないことを分からないままにしない勉強熱心さ、そして何より、日本語や日本への愛に心から敬服します。

日本人が無意識に使う日本語。

日本語をゼロから習得した日本語学習者だからこそ「なぜ」の視点がとても新鮮です。
日本人として日本語を振返り、また日本文化をより理解するためにとても価値のある視点だと思います。

日本語に限らず、言葉は常に変化し続けています。

本来、誤用であった言葉でも使われていくうちに許容されていきます。

日本語は世界一曖昧な言語だと言われています。

日本語学習者からすると、
「Yes?」or「No?」
どっち?とわからなくなる曖昧な言葉が多々あります。

時々、私たち日本人ですら、どっち?と聞き返さなければならに場面に出会うこともあります。

日本語学習者からよく聞かれること

よく日本語学習者から聞かれることは
「大丈夫」の意味が分からなくなって全然大丈夫じゃない。
ということです。

本来「大丈夫」の意味は

①安心していられる様子
②間違いがなくて確実なこと
③強くてしっかりしていること

に使います。

▼病気・怪我の時
Q「もう体は大丈夫ですか。」 
A「はいもう大丈夫です。」


▼壊れた椅子を直して座る時
Q「もう座っても大丈夫ですか。」
A「座っても大丈夫ですよ。」

非常に強くて安心できる時に使われるのですが…。

最近、若年層を中心に断る時に「大丈夫です。」と使われることが多いので日本語学習者は混乱するのです。

▼レストランでコーヒーを飲んでいる時
Q「コーヒーのおかわりはいかがですか。」 
A「はい大丈夫です。」

▼コンビニの支払いの時
Q「レシートは大丈夫ですか。」 
A「はい、大丈夫です。」

「大丈夫」はOKでもNGでも使われるのですから、その時のイントネーションや雰囲気で読み取らなくてはならい。
日本語学習者にとって判断するのは至難の業で非常に曖昧な言葉となるわけです。

たとえば、

Q「ランチに行きませんか。」
A「大丈夫です。」

さてあなたならどう判断しますか。

どんな表情をしていて、どんな声のトーンで言っているのかを考えなくてはならない。

この「大丈夫」の使い方は誤用です。

この誤用は、物事を明確に伝えることが苦手な日本人の国民性から来ていると思います。
断る時に「いりません。」と言うよりも「大丈夫です。」と言う方が丁寧で優しく聞こえるからでしょう。

日常会話の誤用が頻発している曖昧な日本語

▼断りの言葉
Q「レジ袋は必要ですか」 
A 誤)「大丈夫です」→ 正)「いりません」

Q「今日、ランチに行きませんか。」
A 誤)「大丈夫です」→ 正)「いいえ、行けません。」

▼許可を得る言葉
Q「レジ袋は必要ですか」 
誤)Q「このペン、使っても大丈夫ですか。」 
  A「大丈夫です。」
正)Q「このペン、使ってもいいですか。」
  A「はい、いいですよ。」

他にも 日本語には曖昧な言葉が、多々あります。
例えば、「結構です。」「いいです。」「そうですね。」などなど。

曖昧な日本語は、確かに、厄介な言葉かもしれません。
しかし、この曖昧な日本語には、日本人の相手に不快な思いをさせてたくない、傷つけたくないという、「思いやりの心」が詰まっているのです。

確かに、日本語学習者にとって、曖昧な日本語は、とても難しい言葉だと思います。
言語というのは、ただ、単語を覚え、文法を学習するだけで、習得することはできません。
その言語が使われている国の人たちの習慣、文化も知って初めて、習得することができるではないでしょうか。

その意味、曖昧な日本語を習得することは、日本語学習者にとって、とても意義のあることだと思いますので、ぜひ、少しずつでも、理解していただいて、日本語の曖昧さを楽しんで学習していただけたらと願っています。

この記事を書いた人

著者:plusJ 
日本語講師 川村真須美

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