オキナビGLOBALコラム

人間関係をスムーズにする日本語

外国人に日本語を教えていると、様々な質問に出会います。

彼らからの質問を真摯に受け止め、真剣に考え、その答えをどのような教え方をすれば、分かりやすく伝わるのか。
この教室にいる全員にとって理解できる言語が日本語しかない場合は、日本語で日本語を説明しなければなりません。
また、彼らのレベルに応じて、的確に言葉をコントロールしなければなりませんので、日々工夫を重ねて磨くことが求められています。

北部山岳地帯に広がるのどかな農村

ごくありふれた日常生活で「先生、この言葉の意味は何ですか。」こうした質問は教師の想像を越え、また時には授業のための準備と計画のわずかな間隙をついて発してきます。

では、彼らが日頃どのように日本語をとらえて、どう使っているのか。少しご紹介します。

シーン①

フィーさん

先生!
明日のキャンプは中止になりましたね。

先生

それは残念ですね。

フィーさん

台風のおかげです。残念ですね。

先生

台風のおかげ
フィーさん、そういう時は「台風のせい」でしょう?

フィーさん

台風のせい?どうしてですか?

先生

フィーさんはキャンプに行くことができませんね?
うれしいですか?

フィーさん

いいえ 残念です!行きたいです。

~せいで」というのは
物事が起きる原因や理由を自分意外にする時に使う言葉で被害を被った時に使う言葉、つまり「よくない結果悪い結果」を言いたい時に、日本人は「~せいで」を使っています。

~おかげで」は「~せいで」と同じように、良いことがあった時に使う言葉、つまり「よい結果上手くいった結果」を表現する感謝の気持ちの時に使う言葉です。

先生
フィーさん

あ~「~せいで」は、ネガティブの時に使います。
先生、そして「~おかげで」は、ポジティブの時に使いますか?
うん、うん。わかりました。

先生!日本語がとても楽しくなりました。
先生のおかげですね。
「~おかげです。」を使う時は、気持ちがいいですね。先生!

シーン②

トンさん

先生!
先生の話は、いつもおかしいですね。

先生

どうおかしいですか?(変な空気になったので聞いてみました。)
どんな気持ちですか?

トンさん

先生と一緒に勉強すると楽しい気持ちになります。

先生

それは、「先生の話は おもしろいです。」といいます。

トンさん

どうしてですか?
おもしろい」と「おかしい」同じじゃないですか。

さて、この時日本人のあなたならどう対応しますか。

このシーンのように、言葉ひとつで受け取る側の気持ちや周囲の空気を一変させ、順調にいっていた人間関係もその何気ない一言で、大きな誤解を招き損害を被る事態になりかねないことを知って頂きたいのです。
我々日本語教師は彼らの習得レベルと語彙量をある程度把握しているので、もう一度一歩踏み込んで彼らの気持ちを聞くことにしています。
返答を聞いて解説を加え、修正してまた発話してもらうのです。

【誤用の理由】
〇「先生と一緒に勉強するのはおもしろいです。」と言いますが
×「先生と一緒に勉強するのはおかしいです。」とは言いません。

「おもしろい」は興味がある・もっとやりたい・もっと見たい時に使います。
例えば、怖い映画でも「あの映画はおもしろかった」と使いますし、難しいことでも興味があるなら「勉強はおもしろい」と使います。
つまり、何かを見て笑ったりする時は「おもしろい・おかしい」両語、使うことができます。

しかし「おかしい」は変だな!普通ではない、正しくない、悪い時にも使います。

先生
先生

トンさんもう一度、練習をしましょう。
トンさん、先生のアイフォンの音がでません。聞こえません。

トンさん

アイフォンは悪いですか?

先生

はい、先生のアイフォンはおかしいです

トンさん

あ~ はい、はいわかりました。先生!

このように、2つの会話はどちらも「自分自身の心情」を表す言葉になりますから聞き手も無意識にその言葉をキャッチします。

我々は日本語を教えるポジションにおりますが、周りにいる日本人の皆さんにも日本語はもちろん、生活習慣などあらゆる場面で「その言葉変だなー」と思う瞬間は質問をして気持ちを聞いてほしいのです。

間違った使い方を覚えてしまうと相手に誤解を与え、嫌な思いをさせてしまうことにつながります。
無意識に相手を不快にさせることを繰り返さないためにも、言葉を正しく使い分けることをしっかり身に付けることが日本語習得の過程で重要性であり、彼らの人間関係もスムーズになる手助けになると思います。

この記事を書いた人

著者:plusJ 
日本語講師 川村 真須美

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