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魔法のことば「やさしい日本語」

「やさしい日本語」という言葉を聞いたことがありますか。
「やさしい日本語」とは、阪神・淡路大震災をきっかけに考案された、外国人にとって、より簡単なわかりやすい日本語のことです。

 

私たち日本人は、外国人とコミュニケーションを取りたいとき、なんとか自分が知っている英語を駆使して、話しかけたりしないでしょうか。
しかし、日本に住むすべての外国人が英語を話せるとは限りません。
また、すべての外国人の母国語で情報を提供するのは、難しいことです。

そこで、考え出されたのが、「やさしい日本語」です。

 

当初は災害時に外国人に必要な情報を提供するために、どうしたらよいかと考えて作られました。
今では、行政サービスや観光の分野でも広がりつつあります。

 

優しい日本語

例えば、
「23日からの連休に不要不急の外出は控えて」
という呼びかけは、「やさしい日本語」に言い換えると
「23日からの休みに用事のない人は出かけないでください
となります。

 

今後、日本は、介護、観光、農業、その他、多くの分野で外国からの労働力を受け入れようとしています。私たちのご近所に、職場に、外国人がいるのが当たり前の社会になってくることでしょう。

 

その時に、外国人とのコミュニケーションに役に立つのが「やさしい日本語」です。

 

「やさしい日本語」は、簡単な言葉で、できるだけ短くゆっくり話すことが基本です。
私たち日本人からすると、少し違和感のある言い方になることもありますが、そこは、外国の方の理解を優先して、目をつぶってください。

 

私たち日本人が少しだけ、気を付けて「やさしい日本語」を、職場や地域で使ってくれるだけで、日本語がまだまだ未熟な外国人でも、画期的に日本語への理解が深まります。

 

そう、「やさしい日本語」は、外国人と日本人のコミュニケーションを円滑にする「魔法の言葉」なのです。
というのは、少し大げさですがお互いの距離がぐっと近づく事まちがいなしです。

 

そのために、まず外国人がどのように日本語を学んでいるのかを少しお話ししたいと思います。

 

来日する外国人は、いろいろな在留資格で入国してきます。
そのなかで、技能実習生や留学生の多くが母国や日本で初めて学習する日本語はていねい形の「です。ます。」調です。

 

動詞の学習のスタートは、「食べる」「飲む」「勉強する」という普通形(辞書に載っているかたち)ではなく、「食べます」「飲みます」「勉強します」という丁寧形(「です、ます」形)から学習します。

 

初級の日本語学習者にとっては、「朝ご飯を食べますか?」は理解できますが、「朝食、食べる?」と聞かれても全く理解ができない未知の言葉なのです。
日本人からすれば、「どちらでも同じでしょ」、「朝食、食べる?」の方がより、簡単な言葉ではないかと感じる人も多いかと思います。

 

親しみをこめて、「ここに、名前書いてね」とやさしく伝えたちつもりでも、「ここに名前を書いてください」としっかり、「を」という助詞も含めて、言わないと通じないのです。

 

日本人が簡単、やさしいと思っている表現が、外国人にとっては 実は、難しい言葉になっていることが多々あります。

 

これから多くの外国人が日本で社会の一員として、より働きやすく日本に定住してもらうためには、私たち日本人が「やさしい日本語」に興味を持って少し学んで、より外国人が暮らしやすく、働きやすい社会になっていく必要があると思います。

 

そのために、私たち日本語教師は、外国人に日本語を教えるだけでなく、外国人を受け入れてくださる企業や地域の皆さまに、「やさしい日本語」にも興味を持っていただき、また、実践していただけるよう講習会などを通して、「やさしい日本語」を広めていければ、と思っております。

この記事を書いた人

著者:plusJ
日本語教師 宮城 厚子

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