オキナビGLOBALコラム

技能実習制度と特定技能制度

技能実習制度とは

技能実習制度は、人材育成を通じた開発途上地域等への技能の移転により、「人づくり」という国際協力を果たすことを目的としています。
この制度は、外国人が「出入国管理及び難民認定法」に基づき日本に在留し、技能等を修得する制度で、平成5年に創設されました。

しかし、賃金や労働時間などの労働条件について、労働者であれば守られるべき最低基準を下回るような環境が散見されたのも事実です。
この点に関する国際的な批判もあったため、これを改善するために、平成28年11月より「技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)」が施行され、順次、この新しい制度に移行していったのです。

技能実習法は、技能実習に関し、基本理念を定め(法3条)、関係者の責務を明らかにしました(法4条ないし6条)。
また、技能実習計画の認定(法8条)及び監理団体の許可(法23条)の制度を設けること等により、技能実習制度の適正な実施及び技能実習生の保護を図りました。
なお、技能実習法は、法務省及び厚生労働省の共管となっています(法103条1項)。

法の施行に伴い、法務大臣と厚生労働大臣を主務大臣として、認可法人である「外国人技能実習機構(OTIT)」が設立されました。
それまでの技能実習制度では、「公益財団法人国際研究協力機構(JITCO)」が大きな役割を担っていましたが、新制度においては、実習計画の認定などはこの
OTITが行うこととなりました。

すなわち、これまでは、技能実習の内容や、技能実習生の受入機関の基準等は、入管法に基づく省令等において、技能実習生の入国等の条件として規定されているにすぎませんでした。
そのため、労働者であれば守られるべき最低基準を満たしていないときも、技能実習生の入国を認めないという処分による間接的対応しかできず、十分ではありませんでした。


そのため、技能実習法では、上記のような、技能実習計画の認定や監理団体の許可の制度を設けるなどして、受入機関を直接規制し、制度の適正化を図ることとされたわけです。

特定技能制度とは

これに対して、新しい在留資格である「特定技能」は、端的に、「人手不足解消」を目的として創設されたものです。
少子高齢化により労働力人口が減少する日本にあって、東京オリンピック需要や外国人観光客(インバウンド)の増加といった要素が重なり、我が国の人手不足は深刻な状況が続きました。

宿泊業や外食業においては、例えば、留学生等をアルバイトとして採用するなど、現時点でも多くの外国人によって日本が支えられているのは事実です。
ただし、留学生の在留目的はあくまでも「学校で教育を受けること」ですから、アルバイトができるのは、原則週28時間以内となっています。

また、建設業や製造業など特定の業種においては、上記でご説明いたしました、技能実習生の受入れが盛んに行われてきました。
しかし、技能実習制度の目的は「人材育成を通じて開発途上国へ技能等を移転し、その国の経済発展を促す国際協力」となっていますので、行える作業の範囲や在留できる年数など、厳しい制約の中でしか活用することができません。

このような状況の打開のために、外国人労働者が日本の現場で作業を行える在留資格、「特定技能」が創設されたのです。

技能実習制度は、その活用によって、「人づくり」という国際協力のみならず、我が国の実習実施者にとっては、社内の活性化につながりますが、「人手不足解消」を目的とするものではありません

これに対して、新しい在留資格である「特定技能」は、端的に、「人手不足解消」を目的として創設されたものということになります。

maehara

この記事を書いた人

行政書士法人ウィアライズ
統括代表 行政書士 前原 正人

1976年生まれ。昭和薬科大学附属高校卒業、琉球大学法科大学院卒業。2012年に行政書士事務所開設、2019年より沖縄県内3つ目の行政書士法人としてウィアライズ設立。2020年より沖縄那覇事務所、東京事務所に加えて沖縄石垣事務所も開設。沖縄那覇事務所において、旅館業許可申請、住宅宿泊事業届出など宿泊施設に係る許認可申請に年間100件以上関わる。外国人関係業務においても、株式会社ジャンボツアーズの担当顧問として、株式会社プロアライアンスとの共同運営である「オキナビGLOBAL」のもと、日本で就業を希望する外国人の採用推進のサポートを展開中。

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